前回、アジア各国のトイガン事情について書いた。次は韓国の事情をお話する約束だった。今回の独り言はその韓国から来た一通のメールから始まるお話を取り上げてみた。いわば快挙ともいえるつぶやきである。写真が少なく長文で読みづらいと思うがピーメファンの人にはぜひ読んで欲しい。
韓国からメールが届いたのは2002年6月3日。その書き出しは
こんにちわ、私は韓国のウェスタン・マニアですが・・・。
(Hello, I'm KOREAN western mania..)
というものだった。
彼の名前はドルフ。プライバシーを心配して原稿にすることを相談したらファストドロウの発展のためなら全てオープンにしてもいいと返事をもらった。今回はファミリーネームを抜いて原稿とした。
ドルフの最初のメールはタナカ社製のガスガンSAA用のグリップについての問い合わせだった。本来、当社はホームページの頭に表示しているように日本国内だけが対象のページとなっている。そのため海外からの問い合わせや注文には残念ながら「Domestic
Japan only(日本国内だけです)」という返事をしている。ましてや他社製品についての問合せだ。がしかし、この頃、ちょうど香港、台湾から帰ってきたあとでアジアのトイガン事情、ファストドロウの普及の可能性などネットに出す原稿を書いていた。ドルフのメールを見て韓国では一般におもちゃの銃、遊戯銃が果たして認められているのだろうかという疑問が浮かんだ。一番の興味は韓国のトイガンはどのような扱いを受けているのかで、それを知るいいチャンスとばかりに彼とのメール交換が始まった。
題して「コリアン・シューター、ドルフからのメール」だ。
彼にメールで韓国でのトイガンの扱いを聞いたがその答えはおおむね次のようだった。
韓国、ソウル市内には約20店舗くらいのガンショップが有ります。ただ、必ずしも認められて営業している訳ではありません。韓国の法律はトイガンに対してはとても厳しいです。多くのファンが法律の緩和を求めているものの道のりは険しいです。トイガン(ファストドロウを含めての)マーケットはとても大きいものと考えられます。将来ファストドロウがスポーツの一つとしてマーケットに認められる日を待っています。
(Anyhow, we have about 20 shop in SEOUL (about 30 shop in KOREA), but they are almost
not permitted and in a small way. You know, KOREAN law for toy-gun is tight very much now. Many of mania and
the persons concerned are push and push, but there has no progress yet.
I think that toy-gun (included fast-draw) market is not small but the law is always question.......中略。
I want, hope that market will be opened and fast-draw keep a position as one of sports in KOREA.)
以降、何度かメールの交換があった。途中でサッカーワールドカップがあった為、メールのほとんどがお互いの国のチームを称えあうものになっていた。良好なる日韓関係構築だ。その間はお互いの本来の用事は棚上げ。メールの一部紹介をすると…。
6月14日ドルフ発
今日は日本と韓国にとって歴史的な日です。日本は決勝戦に進むと思いますが韓国は…。ポルトガルはとても強いチームです。どちらも決勝戦に進めることを願っています。
(Today is historical day for Japan & KOREA.
I think Japan team will almost enter the final tournament. Congratulations!!!
But KOREA team ........hmmmmm. not so easy... Portugal is very strong team... I hope we go to final
tournament together..)
6月15日ドルフ発
加藤さん!!おめでとう!!!韓国と日本がベスト16に残ることが出来てとてもうれしい。ともにお互いのクラスのトップに行きましょう!!
(Dear Kato,
CONGRATULATIONS!!!!!!!!!
I'm happy cause Japan and Korea enter best 16 teams together!! And also top of each classes!!!)
私もこのようなメールを送った。
6月16日コネティ発
ドルフへ。メールありがとう。ベスト16に韓国と日本が残れてうれしいです。次はイタリア戦ですね。良い結果が出ることを願っています。
(To Dolph,
Thank you for sending mail. And I am very much happy that both Korea and Japan could enter best 16 teams!!
In next game, you have to match with Italy team. Hope you could get successful result!)
日本が負けた後には、
6月19日コネテイ発
ドルフへ。おめでとう!!韓国がベスト8に入ることが出来て。知っての通り日本は勝つことが出来ませんでした。しかし、我々はブルーユニフォームの戦士を誇りに思い彼らへの拍手を惜しみません。今日からは我々は韓国チーム、赤い悪魔を応援します。そして韓国がアジアンスピリットをもって最終戦に行ける事を願っています。
(To Dolph,
Congratulations!!
Korea could survive among best 8 team. As you know, Japan team could not win.
However we all Japanese people proud of blue worrier and clap hands for them. From today all Japanese people
support Korean team, red evil. We hope Korea would run forward to final match with a Asian spirit!!)
その返事では
6月24日ドルフ発
加藤さん、親愛なるメールありがとう御座います。明日、韓国チームはドイツと戦います。強いチームです。しかし私を含む全ての韓国人は赤い悪魔を応援します。横浜に行かなくては!!
実は興奮しています。試合中はデーハンミングと叫んでください。(5回手をたたいてください。)日本からのサポートに感謝します。
(Dear Kato,
Thank you so much for your kind mail.
KOREA team will fight with German team tomorrow... wow!! so strong team you know. But I and all of KOREAN
will cheer a our team, Red evils, too.
Let's cheer Korea team with me!!
We hope, want and must go to Yokohama!!!!!!!! ^^; I'm in excited condition...
Please shout in the game, DAE~HAN MIN GUK!!!
Chapchap^chapchap chap (5 times hand clapping)
*^^* Thank you so much for your Japanese's support. I don't forget it.
Thanks..
Dolph)
我々の友情はワールドカップの興奮とお互いの国を称えるというプロセスを経て培っていったように思う。それをもとにお互いの考えを交換する機会が増えていった。ある時私が送ったメールの一部を紹介すると…。
7月12日コネティ発
私がいつも言っていることを英文にしただけだが。
「私たちが子供の頃はテレビで数多くの西部劇をやっていた。ローハイドやララミー牧場などだ。それらの西部劇から私たちは正義とは?を学んだと思う。個人的には私の仕事は単にモデルガンやエアガンのピースメーカーを売っているわけではない。それにそのスピリット、フロンティア・スピリットをつけて売っている。そう考えて仕事をしている」みたいなことを書いた。
(When we were in childhood, there are so many TV western movies, such as Lawhide, Colt 45,
Paladin, Lalamie, Rifle man, Wanted dead or alive, we studied what is Justice through these western movies.
I personally think my job is not simply to sell products (SAA) but sell products with pioneer sprit.
This is my Job. I always think so.)
それに触発されたかもしれないがある時、ドルフがわが社のファストドロウカスタムモデルガン(FDC)を買いたいと言って来た。しかしおそらく税関が許さないだろう。トイガンに対する韓国の法律が整っていないからだ。それでも手に入れる努力はしたいというメールだった。それで私は次の提案をしてみた。「こちらからFDCを送る。ドルフはそれを受け取る努力をする。万一、受け取れなければその場で受け取り放棄すればいい。もちろん、FDCはドルフにあげるつもりで送るのだから代金については心配しなくてもいいよ。」というメールを出した。私のピースメーカーに対する熱っぽい語りが与えた影響の責任も少なからず感じていたからだ。
8月12日FDCキットを韓国に送った。
そして彼のいばらの道はここから始まった。
8月19日ドルフ発
加藤さんへ。ウーーン。残念ながらFDCキットは私の手に渡っていません。郵便局はFDCはこちらで預かっています。しかし警察からの許可が必要です。でも私は努力します。あす、郵便局にいってFDCの様子を見てそして協会(?)にいってFDCを手に入れるためにどうすればよいかを相談してきます。もしダメな場合はそちらに送り返すようにします。その費用は心配しないで下さい。前に言いました。ベストを尽くすと…。いい知らせを待っていて下さい。良いファストドロウシューターになる為には長く、つらいことを経験しなくては…。
ドルフより。
(Dear Mr. Kato,
Hmmmm....
Unfortunately, FDC kit is not arrived to me....
Post office said, they just keep FDC but they need approval from Police. But I will do my best..
Tomorrow, I 'll visit Post office, check FDC condition, and contact association, and ask them what do I do
for get FDC. If I can't get FDC, I will send back to you. Don't worry about cost.
I said, I will do my best.. please wait for good news from me. The way to be good fast drawer is so long
& hard... ^^;;
Thanks,
Dolph...)
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メールはほとんど毎日あった。途中、彼も何度かめげかけて自信を無くしていた頃もあった。私は彼を励ます為のメールを送りつづけた。メールは一日に何回もという日もあった。
同日ドルフ発
加藤さん。励ましのメールありがとう御座います。貴方の返事で気持ちが楽になりました。ベストを尽くします。サポートをありがとう。ドルフより。
(Dear Mr. Kato,
Thanks you so much for your reply..
I just say to you "Thank you....and I'm sorry...."
Your reply give me comfort...thanks..
OK, I'll do my best, so I'll never feel refuse for my effort. Thank you for your support...
Dolph)
8月20日ドルフ発
親愛なる加藤さん。次のことを教えてください。FDCは完成品ではない。そうですね?ではパーツがいくつ有るかを教えてください。昨夜と今朝、協会、警察、税関と交渉してきました。今の問題は製品がキットなのか完成品なのかです。キットの場合パーツが…。これからまた税関に行かなくては…。ごめんなさい。分からないことばかり言って。昨日から心配で寝てなくて…。眠いです。ドルフより。
(Dear Mr. Kato,
Please inform me as follows..
- FDC kit, not finished product, right? then, how many part make up this kit? (I don't see that kit yet.)
- If you can or If you have picture of FDC kit. (packing, each part in box.. not finished product..)
I was contacted association of gun safety, Police, Custom house yesterday evening and today morning..
Now, issue is finished product or assembly kit. In case of kit, how many part, ....
Today I will meet custom officer.. ,,,
Sorry for my incoherent talks... I stay up all night last night... @.@ so sleepy...
I'll be right back...
Dolph..)
8月21日ドルフ発
こんにちわ加藤さん。FDCキットを郵便局で見てきました。とても美しい…。でも私の状況はあまりかんばしくありません。税関が言うにはFDCはもう上の事務所に行ってここでは何の判断が出来ないとの事。では、どうしたら手に入れることが出来るのか?方法は二つ。警察から許可をもらうこと。しかしその場合、安全協会で許可を得ることが必要だ。でもそれにはとても大きな費用がかかる。警察に直接行って検査なしでの許可を求めようと思っている。それか送り返すか…。あと余裕は10日間。それまでは頑張るつもりです。ドルフより。
(Dear Mr. Kato,
Good afternoon..
I saw FDC kit today morning at Post office.
So beautiful gun...
But, my situation is not good.
A Custom officer said, that kit is already report to superior offices so he can't handle himself.
Then how can I get it? Solutions are two way..
One is, take permission from Police. but in this case, I'm needed permission of Safty Association.
But this inspection request cost is so expensive. So, I will meet with Police directly tomorrow and I will
request permission without inspection.
The other way is send back........
I said " I will do my best!" I have time to spare about 10day.. If I can do , I will do!!
Even I recompencse for your kindness, I will do my best.
I will right back.
Dolph..
A SOLDIER ISN'T BORN.
HE'S MADE..
DOLPH)
8月22日ドルフ発
加藤さん。本日、また税関と交渉しました。彼らが言うには資料、証明書(FDCがただのおもちゃであるという)や公の検査機関からの検査結果、関西でのアミューズメントパークで使用されている(実名は避けた。)事などの情報を送ったことで昨日よりは状況は好転しているようです。ドルフより。
(Dear Mr. Kato,
I was contacted Custom officer today again.
He said, Documents - evidence (FDC kit is just toy) from manufacturer (Hartford), certificate from
Japanese Public Safety Test organization, and your products are using at big Amusement park in Osaka. This
response is better than yesterday. If you have any question or problem, contact me ASAP.
Dolph..
A SOLDIER ISN'T BORN.
HE'S MADE..)
韓国警察、税関、安全協会…。彼はほとんど毎日彼らと折衝をした。その努力はもはや努力と言うより執念とさえ思えた。メールの最後には必ず添えられていた言葉があった。兵士は生まれない。作られていくのみ…。彼の明確な意思の現れだったと思う。そしてここにも意思を曲げず進んでいくフロンティアスピリットを持った男がいたと断言できる。そして届いたメールのタイトルはなんと…。
I WIN!! (勝った!!)だった。
8月24日ドルフ発
親愛なる加藤さん。勝ちましたよ!!警察に、税関に、協会に!!。FDCを手に入れました。ありがとう!!どのように表現したら分からない位興奮しています。マニュアルを読んで、パーツをチェックして一晩中…。ありがとう御座います。このキットは一生大切にします。ドルフより
(Dear Mr. Kato,
Kato sang !!!
I won against Police, Customs and Association by a your favor. Thank you so much for your support.
I was wondered at my oratorial talent!! ^^----> almost fraud.....^^;
Anyway, thanks again for your kind present and support.
I'm still excited condition..
Read manual, check each part, take a photo, and read manual again, check part.....all night long...
Anyhow, thank you so much.
I will keep this kit whole my life.
Thanks.....
Have a best weekend!!!
Sincerely yours,
Dolph,
p.s - Please say thanks to your staff in Nagoya & Tokyo.
- I'm study Japanese hard.. please wait for our direct contact. *^^*
A SOLDIER ISN'T BORN.
HE'S MADE..
DOLPH,)
異例の長い独り言になってしまった。英文が中心の原稿で不満足な読者もいることだろう。それでも行の間からはドルフの苦悩が読み取れる。しかし彼は強い意志によってFDCを手に入れた。私の好きな言葉「
None but the Brave deserves the Fair
」(勇者のみが美女を得る)をそのまま実行したドルフにその姿を見せてくれたことに感謝したい。と同時に国が違えばこんなに世界が変わるのかを思い知らされた。たかだか、おもちゃと言うまい。そしてそのおもちゃで遊べる日本人の我々はなんと幸せで平和なのだろうと考えさせられた。
最後にI WIN!!の後に贈った私のメールを紹介してこの項の締めくくりとしたい。
8月24日コネティ発
いまドルフからのメール受け取りました。おめでとう。この成功を聞いて本当にうれしいです。今回の成功が韓国でのファストドロウファンが増える為の第一歩になることを願っています。
追伸。ドルフ、貴方はとても努力をしましたね。フロンティア・スピリット(開拓者精神)はそこにあると思います。数多くの障害を乗り越えて前に前に進んで行きましょう。ドルフ、貴方を尊敬し誇りにおもいます。
加藤より。
(Just now I received your mail.
Congratulation!! I am very much happy to hear this success story. I hope this getting be a precious step for
expanding sport and sprit of Fast Draw!!
Enjoy my kit!!
Kato,
P.S.
You did a very good effort!! Frontier spirit is at there. We go forward with overcoming many obstacles!!
Anyhow I really think highly and proud of you.
TKS
Kato,)
【2002年9月12日発】
(株)ハートフォード代表 コネティ加藤 |